【2025年最新レポート】マイアミ住宅市場が堅調な理由|住宅価格+77%の背景にある「5つの実体経済要因」
October 22, 2025
近年、アメリカの都市の中でもマイアミがひときわ注目を集めています。かつては“リゾートの街”という印象が強かったこの都市が、今では金融・テクノロジー・文化の新たな拠点として世界の富裕層や企業を惹きつけています。その変化を最もわかりやすく示しているのが、不動産市場の動きです。
2019年以降、マイアミでは住宅価格が全米平均を大きく上回るペースで上昇を続けています。とはいえ、日本ではまだ「マイアミがそんなに伸びているの?」と驚く人も多いかもしれません。
この記事では、マイアミの住宅市場がなぜ崩れず、むしろ安定的に成長を続けているのかをデータから読み解きます。そして、海外不動産に興味を持つ日本の投資家にとって、この動きがどんなチャンスやヒントにつながるのかをお伝えしていきます。
マイアミ不動産はなぜ上がり続ける?住宅価格+77%でも“バブルではない”理由
2019年以降、マイアミ・デイド郡の住宅価格は急伸しています。
一戸建ての中央値は6年間で**+77%**と、全米平均(+52%)を大きく上回りました。一方で、同地域の平均賃金上昇率は**+29%**にとどまり、所得を超える価格上昇が続いています。それでも「バブルではない」と指摘するのが、MIAMI REALTORS®チーフエコノミストのゲイ・コロラトン氏です。
同氏によれば、この上昇は金融緩和や投機ではなく、雇用拡大・移住増加・供給制約といった実体経済の要因によるもの。事実、マイアミでは2011年から14年連続で前年比プラスが続いており、パンデミック期以降も実需に裏付けられた成長が続いています。つまりマイアミの不動産市場は、短期的な過熱ではなく「地域成長と需要」に支えられた持続的トレンドにあると言えるでしょう。次のセクションでは、その安定的な成長を支える5つの実体経済要因を具体的に見ていきます。
マイアミ不動産の強さを支える「5つの実体経済要因」

マイアミの住宅価格が安定して上昇を続けている理由は、投機や過剰融資ではなく、実体経済の土台が非常に強いことにあります。MIAMI REALTORS®のレポートでは、その背景を示す「5つの要因」が挙げられています。一つずつ見ていきましょう。
① 審査基準が厳格化され、健全な融資環境が維持
2000年代のリーマンショック期と違い、現在のマイアミでは住宅ローンの管理が非常に健全です。住宅ローン残高のGDP比は、**2009年の約70%から2025年時点で44.5%**へと大幅に低下。信用に頼りすぎない市場構造に変わりました。
また、住宅ローンの延滞率は**リーマン期の12%→現在1.8%**へと激減しています。これは、返済能力のある層が中心となって住宅を購入していることを示すデータです。さらに、2025年第1四半期時点での住宅ローン利用者の中央値FICOスコアは777(=「優良」レベル)。「審査の甘さで支えられたバブル」ではなく、実需と信用健全性に基づいた成長といえます。
② 雇用の質が変化──高所得産業の伸びが全米を上回る
住宅価格を支えるもう一つの要因は、地域経済の底力です。マイアミ都市圏の非農業雇用は、2019年から2025年の6年間で**+9.5%**増加。これは全米平均(+5.5%)を大きく上回っています。特に注目されるのは、高収入職種の拡大です。
- 金融・不動産・保険分野:+18%(全米+5%)
- 専門・ビジネスサービス:+14%(全米+5%)
- 情報通信分野:+6%(全米+2%)
かつて観光とリゾートで知られたマイアミは、いまやテクノロジー、金融、専門職が集まる**「高付加価値雇用都市」**へと進化しています。この雇用構造の変化が、安定した住宅需要を生み出しているのです。
③ 州外からの移住が急増、富裕層の流入が続く
パンデミック以降、マイアミには全米各地から移住が相次ぎました。特に所得の高い層の流入が目立ちます。
IRS(米国国税庁)の移住データによると、マイアミ・デイド郡への流入所得額は、2019年:38億ドル → 2020年:45億ドル → 2021年:104億ドル → 2022年:84億ドルと推移。
一時的なブームではなく、高水準で定着しています。主な移住元はニューヨーク州、ニュージャージー州、カリフォルニア州。運転免許の住所変更数も2019年比で+22%増加し、カリフォルニアからの移住は+66%、ニューヨークからは+33%と特に顕著です。マイアミは今や「住むための街」として再評価され、移住による富裕層需要が住宅価格を支えています。

④ 富裕層による“キャッシュ買い”が市場を支える
マイアミ市場の特徴のひとつが、現金購入者の多さです。100万ドル以上の高級住宅取引は、2019年の8%→2025年には24%へと急拡大。そのうち46%が現金取引で、全体平均(25%)を大きく上回ります。また、高級住宅価格の95%水準(いわゆる上位5%層の物件価格)は2019年:$1.4M → 2025年:$3.5Mへと上昇。
「超高級(99%水準)」では**$10.7M(2019年$3.5M)**と、約3倍に跳ね上がりました。富裕層によるキャッシュ購入が多いことで、金利上昇の影響を受けにくいという安定要素が市場に加わっています。
⑤ 住宅供給の減少──「金利ロックイン効果」で売りが減少
2022〜2023年、FRB(米連邦準備制度)はインフレ抑制のために計11回、計5.25%の利上げを実施しました。これにより、既存の低金利ローンを持つ所有者が**「売ると損をする」状態**となり、新しい住宅供給(新規リスティング)が急減。
具体的には、
- 2022年:−4%
- 2023年:−23% の新規リスティング減少が確認されています。
住宅供給が減れば、当然価格は下がりにくくなります。つまり、「金利上昇=価格下落」とはならない構造が、マイアミでは形成されているのです。これらの5つの要因が、投機ではなく実需に支えられた堅調な価格上昇をもたらしています。今後も、金利動向や雇用環境、移住トレンドなどの実体経済的な要素が、マイアミ市場の価格を左右していくでしょう。
世界の投資家が注目するマイアミ──成長と安定が共存する都市の実像

マイアミの住宅市場を支えるのは、単なる価格上昇ではなく都市全体の構造変化です。ここでは、その成長がどのように経済・住宅・国際投資・ブランドの4つの側面で広がっているのかを見ていきましょう。
①経済構造の転換
これまで観光とリゾート依存だったマイアミが、金融・不動産・テック・クリエイティブ産業を取り込む多角型都市へ移行しています。結果として、雇用の質が向上し、「暮らすために選ばれる都市」へ変化。不動産市場は季節的・一過性の需要ではなく、常時安定した居住需要を持つようになりました。
②住宅需要の質的変化
富裕層やリモートワーカーの流入により、高価格帯住宅の比率が上昇し、街全体の住宅在庫が「高付加価値型」に転換。結果として、住宅が資産価値を維持・向上させやすい市場構造になっています。特に現金購入が多いため、金利上昇局面でも取引が止まりにくいのが特徴です。
③国際投資先としての地位向上
マイアミはもともと南米資本の流入が強い地域でしたが、近年では欧州・アジア資本の関心も拡大。「米国で唯一、グローバルに開かれた不動産市場」としての存在感を高めています。これは日本人投資家にとっても、ドル資産保有と国際的なリスク分散の両立ができる市場という意味を持ちます。
④都市ブランド価値の上昇
高級住宅地・アート・テック企業が共存する「文化+ビジネス+ライフスタイル」の融合都市として、ニューヨークやロサンゼルスと並ぶ“第三の拠点都市”としての地位を確立。このブランド化が海外マネーの呼び込みを促し、結果的に不動産市場にも長期的な追い風を生み出しています。
マイアミは今、単なる価格上昇局面を越え、「街の成長=資産の成長」という持続可能なモデルへと移行しています。日本の投資家にとっても、ドル建て資産による通貨分散と、都市の発展とともに資産を育てる中長期投資の舞台として注目に値する市場です。
まとめ|マイアミは“バブル”ではなく“成熟する成長都市”へ

マイアミの住宅価格上昇は、投機的なブームではなく、実需と経済の地力に支えられた持続的な成長です。金融・テクノロジー産業の拡大や富裕層の移住が進み、都市の基盤そのものが強化されています。リーマン期のような信用バブルではなく、厳格な融資基準・安定した雇用・人口流入・供給制約といった経済の基礎要因が、現在の価格を下支えしています。そのため金利上昇局面でも市場が崩れる兆しは見られず、中長期的な資産形成に適した成熟市場へと成長しました。
海外投資先として見ると、マイアミは成長性とリスク分散を両立できる都市です。ドル資産による通貨ヘッジ、継続する人口増加、そして「世界の富裕層が集まるブランド都市」としての地位。これらの要素が組み合わさることで、資産価値を長期的に保ちやすい環境が整っています。
市場の本質は、数字の上下ではなく、その背後にある“街の現実”にあります。マイアミの経済と人の流れを丁寧に追っていくことが、これからの投資判断をより確かなものにしていくでしょう。
Rie Nakai,


